ゴミログ

あの千葉大学の学生です。

超天才プログラマーが見つけた「法律のセキュリティホール」を超天才法科大学院生が超デバッグしてみた

 

 みんなおはエコ!超天才法科大学院生ことゴミクルーン(@DustCroon)です。

 どうして超天才かというと、入試前日にブログを書きながら早稲田に一発合格したり、大学の1年前期をGPA0.38からスタートして4年で卒業したり、借りてたアパートの大家とバトって敷金全額取り返したり、専門外の分野で懸賞論文書いて賞を受賞したからです。その気になれば円周率も1億桁くらい覚えられると思います。

 

 ところで、今日はこんな興味深いツイートを見つけました。

 要するに、道路交通法は自動車の免許の取得を自然人*1に限定していないから、自動運転自動車を公道で試験走行させるために、法人*2が運転免許証を取得し、その法人の免許で自動運転を実験できないか?といったものです。

 果たしてどうなのでしょうか?考えてみましょう。 

 まず、民法には法人について以下のような規定が存在します。

民法第34条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

 これは、法人は、「法令の規定に従い」つまり法律で「やっていいよ!」と認められていなければ(あるいはそう解釈することができなければ)その何かをする権利が認められない、ということです。

 例えば、会社は会社法3条で「会社は、法人とする。」と規定し、その後会社の権利義務、つまりやっていいこと・やらなければいけないことを約1000条に渡り定めています。

 そして、自動車の「免許」というものは、本来誰でも自由にできる自動車の運転は無条件に認めれば交通事故等の危険が多発する可能性があることから、予め一般的に禁止し、その危険がないといえる者に限り自動車の運転を認めるという制度*3です。

 なので、法人であっても自動車の免許を受けることができなければ、自動車の運転をする権利は認められない、運転することはできないということです。

 

 では、道路交通法は「免許の取得を自然人に限定していない」、つまり法人が自動車の運転免許を受けることを認めているのでしょうか?条文をみてみましょう。

道路交通法第84条 自動車及び原動機付自転車(以下「自動車等」という。)を運転しようとする者は、公安委員会の運転免許(以下「免許」という。)を受けなければならない。

 たしかに、この「者」≒人という文字だけに着目すれば、これが自然人のみを指すのか、法人も含むのかをはっきりと決まらないかもしれません。

 しかし、法人それ自体が「自動車を運転をしようとする」ことはできない以上、ここでの「者」は現実に「自動車を運転しようとする」ことができる者、つまり自然人に限られるといえます。また、他の規定*4からも道交法は法人が免許を受け運転することを想定していないといえそうです。

 したがって、道交法84条は自然人のみが自動車の免許を受けることができると定めた規定と解釈することができます。

 

 法律は条文それ自体には明記されておらず、条文だけではその意味を明確にすることができないという事態が多々あります。このとき、条文の文言やその規定の趣旨などから、その条文の意味を再定義することを「法解釈」と呼びます。そして、数多もの法学者、弁護士や裁判官等の実務家の手により積み重ねられてきた法の解釈を学ぶこと、それこそがまさに大学の法学部や法科大学院での法学学習のミソということです。

 「法学」と聞くと「六法の条文を丸暗記する!」というイメージを持たれる方も多いですが、六法というのは英語学習でいう単語帳や辞書に近く、六法や条文だけでは成り立たないものなのです。

 こうした法学の基礎的な話はこちらのサイトがとても詳しくわかりやすくまとまっています(今回自分も参考にさせていただきました)。さらに学びたい方には法学学習Q&Aという本もオススメです。こちらにはなぜか巻末に僕の名前が載っています。

 

 もちろん、「道交法84条の『者』は自然人のみならず法人も含んでいる」と考えることも、解釈の一つであり、無条件に否定されるものではありません。

 しかし、法解釈は文言から読めることができればオッケーというわけではなく、その解釈に一定の妥当性や合理性といったバランスが要求されます。

  

 例えば、「トイレで『トイレットペーパー以外流さないでください』と書かれていたらウ○チを流してはいけないのか問題」を考えてみましょう(汚くてすみません、他に良い例が思い付きませんでした)。

 たしかに、ウ○チはトイレットペーパーではないので、この文言だけからはウ○チを流すことは許されないことになりますが、そもそもトイレはウ○チ等の人間の排泄物を流す場所なのにウ○チが流せないとなると本末転倒になってしまいます。

 なので、ウ○チを流すことはトイレという場の性質上当然の行為だから書かれていないだけであり、『トイレットペーパー以外流さないでください』という表記はウ○チを流してはいけないわけではない、と解釈することができるということです。

 もっとも、性質上「当然の」行為かどうかはどうやって決まるのでしょうか。それは我々の日常生活での習慣や「常識」から判断されます。もしかしたら、皆さんの中で「トイレはご飯を食べるところであって出すところではない」と考えて生活してこられた方もいるかもしれません(いないと思いますが)。しかし、少なくとも世の中の圧倒的多数派はトイレをウ○チする場所として利用しているはずなので、「トイレでウ○チは流さない」と考えることは妥当ではないということになるのです。

 肝心要の部分を実生活の「常識」という曖昧なものさしで判断するというのはなんだか頼りげない感じもしますが、法律は人と人が関わりながら生活することで初めて成立し、意味を持つ以上、当然のことなのかもしれません。なのでこれからも安心してウ○チを流してください。

 

 話を戻すと、「道交法84条の『者』は自然人のみならず法人も含んでいる」という解釈も、条文全体の文言や他の規定などに鑑みて、妥当ではない、合理的ではない(理由は先に挙げたとおり)から、少なくとも行政・司法の場においてこの解釈は採用されないだろうというわけです。

 まとめると、法律を読む(解釈する)時は、以下の図のような思考過程を辿ります。

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 もっともこの問い合わせでは、他の規定について法人の代表者が18歳未満等の免許の欠格事由に該当しないことや、免許試験を受験するといった方法で法人も免許を申請することができるのではないかと照会しています。しかし、道交法がまさに明文で全く認めていない、想定していない方法を明文なしに認めてしまうことは、解釈の限界を超えている(認めるには国会の立法等の手続きが必要)のではないでしょうか。

 

 他方で、道交法と対照的に法人も含むと解釈することができるのが、最初のツイートでも取り上げられていた電波法における法人の取り扱いです。

電波法第4条  無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。

  電波法を見てみるとやはり『者』とは書いてありますが、法人それ自体が「無線局を開設*5しようとする」ことはできるといえそうです。

 さらに、電波法20条2項は「免許人(省略)たる法人が…」と規定していることから、電波法は法人が免許を受けることを想定した規定が置かれているといえます。

 したがって、電波法4条は自然人のみならず法人も免許を受けることができると定めた規定と解釈することができるのです。

 

 以上から、法人は民法によれば「法令の規定に従い」権利を有し、車を運転するには免許が必要なところ、道交法は法人に免許を認めていないと解釈することができるから、少なくとも法学的には「法律を読む限りでは、運転免許は人間に限らず、法人でも取得できる」ということはないこととなります。

 

 結果的に「道路交通法は免許の取得を自然人に限定していない」という指摘は誤りだったということになりますが、「法律に書かれていないことを考える」ことはまさに法学で最も必要な思考プロセスといえるので、大変おもしろいと感じました。

 また、そもそも根本にあった「人が運転しない自動運転の車を公道で試験走行させるためにはどうすればいいのか?」という問題も興味深いです。

 というのも、「完全自動運転の車が事故を起こした場合、誰が責任を負うのか?」など"自動運転と法"の問題は立法や法解釈が追いついていない部分も多く、まさにこれから「法律に書かれていないことを考えて」の解決が期待されている問題だからです。

 

 以前、自分が受賞した懸賞論文のテーマとして選んだのも、仮想通貨という立法や法解釈が追いついていない分野だったので、このような思考は金融商品取引法をはじめとする様々な法律に「仮想通貨」という概念をどうやって嵌め込んでいくか、試行錯誤をしていたことを思い出します。(宣伝)

  

 他にもこの方は様々な「法律のバグ」を見つけていました。

 これは故意犯処罰の原則」と呼ばれるものですが、簡単に説明すれば、犯罪や違法と行為というのは、原則*6として犯罪行為や違法行為をするだけではなく、「故意」にその行為をしたことも必要という話です。

 今回の話ならば、関税法違反になるには、①荷物に違法なものが入っているにも関わららず「私の荷物には違法なものは入ってません」という紙を書いたことでは足りず、②荷物に違法なものが入っていることを知っていたにも関わらず「私の荷物には違法なものは入ってません」という紙を書いたこと、も必要になるというわけです。したがって、本当に自分では、違法なものを入れた覚えがないのであれば、法律上は関税法違反にはならないということです。

 もっとも、故意犯未必の故意、つまり「荷物に違法なものが入っているかもしれない」といった認識でも足りると考えられますし、裁判所は無理やりそういったことを認定したりもするらしいですが、それは裁判所や検察庁のバグなのでどうしようもないです。

   

 他にもこんなツイートも話題になっていました。

 

 この記事では公安委員会から処分書を交付するための出頭通知があっても、それを無視し続けることで、免停や取消を一時的に免れることが可能」なのではないかという指摘がされています。

 まず前提として、道路交通法104条を見てみると、

道路交通法第104条

第1項  公安委員会は、(省略)免許を取り消し、若しくは免許の効力を九十日(中略)以上停止しようとするとき、(省略)、公開による意見の聴取を行わなければならない。(省略)

第4項  公安委員会は、当該処分に係る者又はその代理人が正当な理由がなくて出頭しないとき、(省略)同項(=第1項)の規定にかかわらず、意見の聴取を行わないで(省略)免許の取消し若しくは効力の停止(省略)をすることができる。 

  という規定から、公安委員会からの出頭通知を無視した場合、104条4項の「正当な理由がなくて出頭しないとき」にあたるとして、出頭しないまま免停や取消処分がなされる可能性*7があると考えられます。

 実際に、北海道警察「運転免許の取消し、停止等に係る事前事務処理要領」においても、意見の聴取通知書の様式に「あなた又はあなたの代理人が正当な理由がなく出頭しなかったときは、意見の聴取を行わないで処分を決定します。」と明記されています。

 

 もっとも、この処分の決定によってすぐに免許取消し、免許停止になるというわけではありません。

 先ほどの記事でも

処分の通知書が手渡された瞬間から、免許の効力が停止または取消されます。

 とあるとおり、条文を見てみると

道交法第104条の3第1項 (省略)免許の取消し又は効力の停止は、内閣府令で定めるところにより、当該取消し又は効力の停止に係る者に対し当該取消し又は効力の停止の内容及び理由を記載した書面を交付して行うものとする。

 ということで、実際に免許の取消しや効力の停止という効果が発生するには、処分の内容及び理由を記載した書面を交付する、つまり運転者が出頭して手渡しすることが必要といえます。

 では、出頭せず書面を受け取らないとどうなるのでしょうか。

出頭要請に応じない運転者の場合、警察官が出頭する日時を改めて指定した上で出頭を再度要請することができます (第 104 条の 3 第 2 項)。この場合も運転者はやはり出頭要請を無視することができます。運転者が出頭要請を無視し続けた場合は、公安委員会は、処分の通知書を交付することができないため、処分はいつまでたっても執行されないことになります。

 記事中でもこのように書かれていますが、確かに道交法を読むと似たような規定があります。  

道交法第104条の3第2項 公安委員会がその者の所在が不明であることその他の理由により前項の規定による書面の交付をすることができなかつた場合において、警察官が当該書面の交付を受けていない者の所在を知つたときは、警察官は、内閣府令で定めるところにより、その者に対し、日時及び場所を指定して当該書面の交付を受けるために出頭すべき旨を命ずることができる。

 しかし、この2回目の命令には2つのポイントがあります。
 1つは、警察官が直接お家などにやってきてこの命令をする可能性が考えられることです。
 警察庁行政処分手配者に対する出頭命令及び免許証保管に関する事務処理要領」 の改正について(通達)によれば、出頭命令書を受け取らず出頭しなかった者は「処分手配者」(要領第1の2(6))として登録されます。そして、処分手配者を発見した警察官(認知警察官)は出頭命令及び免許証の保管を行うことができます(要領第3の1)。
 
 2つ目は、警察官はこの命令の際に、道交法第104条の3第3項により免許証の保管、つまり警察官が免許証の回収を行うことができる点です。
 
 

道交法第104条の3第3項 警察官は、前項の規定による命令をするときは、内閣府令で定めるところにより、当該命令に係る者に対し、当該命令に係る取消し又は効力の停止に係る免許証の提出を求め、これを保管することができる。(省略)

  このとき、運転者は免許証の提出を拒むことができるのでしょうか。

道交法第67条第2項 前項に定めるもののほか、警察官は、車両等の運転者が車両等の運転に関しこの法律(省略)若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくはこの法律の規定に基づく処分に違反し、(省略)場合において、当該車両等の運転者に引き続き当該車両等を運転させることができるかどうかを確認するため必要があると認めるときは、当該車両等の運転者に対し、第九十二条第一項の運転免許証又は第百七条の二の国際運転免許証若しくは外国運転免許証の提示を求めることができる。

第95条第2項 免許を受けた者は、自動車等を運転している場合において、警察官から第六十七条第一項又は第二項の規定による免許証の提示を求められたときは、これを提示しなければならない。

第120条 次の各号のいずれかに該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
9号 (省略)第九十五条(免許証の携帯及び提示義務)第二項(省略)の規定に違反した者

  これらの規定からすれば、車の前で警察官が待ち構えていて、車を駐車場から出した瞬間に飛び出してきて104条の3第2項による出頭命令を行い、この命令により67条2項の免許の提示を求めることで、95条2項で提示義務を生じさせ、そのまま104条の3第3項により提示された免許証の保管をされてしまうというテクニックが考えられます(本当にそんなことをするのかは知りません)。

 そしてこの時に免許証の提示を拒んだ場合、道路交通法120条1項9号により、5万円以下の罰金又は科料となるどころか、最悪の場合、そのまま逮捕ということもあり得る*8ようです。

 

  また、警察官が免許証の保管をした場合であっても、運転者に保管証が渡され、この保管証が免許証の代わりとなる(道交法第104条の3第3項後段及び第6項)ので、保管証が有効である間は、直ちに運転できなくなるというわけではありません。

 ただし、この保管証の有効期限は出頭命令で定められた出頭日時まで(同条第7項)とされています。そこで、この期限までに出頭しなかった場合、保管証が期限切れで無効となり、免許証の代わりではなくなると考えられるので、結局、出頭日時以後に運転をした場合、やはり免許不携帯(95条1項)として121条1項10号により、2万円以下の罰金又は科料に処される可能性が残されているのではないかと思いました。

 もちろん、免許不携帯は、125条1項の「反則行為」に該当するので、交通反則通告制度により、反則金を納付さえすれば、刑事訴追等(それに備えた逮捕も含めて)はなされないのが原則(128条2項)です。

 しかし、その者の居所又は氏名が明らかでない、あるいは逃亡するおそれがあるときには、警察官は交通反則通告制度を利用しない(126条)ということがありえます*9

 よほどのことがない限り、制度が利用されないという事態は起こらないと思いますが、なんにせよこの運転者は「免許停止・取消し処分をするための出頭をバックれ続けながら更に免許証まで取り上げられているにも関わらず車を運転した人」ですので、逃亡するおそれがあるとして交通反則通告制度を利用せず、刑事責任を問われても仕方ない気がします。

 

 長くなってしまったのでまとめます。

・違反点数が免許停止、取消の基準に達した場合、出頭通知がなされるが、出頭しなかったとしてもそのまま処分は行われる。

・もっとも、処分の効力が生じるためには出頭して書面の交付を受けなければならないので、これを無視することで処分の効力を回避することができる。

・無視した場合、警察官が自宅等にやってきて出頭命令と免許証の保管を行う可能性がある。ここで免許証の提出を拒むと刑事責任を負う可能性がある

・更に出頭命令を無視することはできるが、出頭の期日を過ぎると、免許証の代わりの保管証が無効となるので、運転をすると免許不携帯として取り締まられる可能性がある。

・免許不携帯は原則として交通反則通告制度の対象なので反則金を納付すれば刑事事件にはならないが、逃亡するおそれがあるなどとして通告制度を回避されると刑事事件扱いになる可能性もある。 

 したがって、道路交通法には、免停基準に達しても永久に運転できるセキュリティホールがあるわけではなく、このバグ技を使おうとすると、かえって免許停止や取消よりも重い結果が発生する危険性があるのではないかと考えました。

 

 いかがだったでしょうか。正直なところ、以上のことが本当に使えるのかは全くわからないので、試してみたい方はぜひ試してみてほしいと言いたいところですが、現実世界にはプログラムやパソコンと違ってエスケープキーも再起動ボタンもないので、こんなことは気にせず安全運転を心がけていただければと思います。

 

 また、自分は超天才法科大学院生ですが、道路交通法は大学院の授業で一度学んだきりで、何か間違っていることを書いていたらすみません。もし、この記事のセキュリティホールを見つけてしまった暇な人はコメントやDMをしていただけるとありがたいです。

 

おわり

 

 

 

 

*1:我々のような生身の人間のことです。

*2:自然人以外で、法律上の権利義務の主体となることを認められているものです。代表例は会社です。(有斐閣オンライン・データベース『法律用語辞典』参照)

*3:櫻井・橋本『行政法第5版』P.81参照

*4:会社等の従業員が酒気帯び運転等をした場合に「法人」も処罰することを定める道交法第123条など

*5:デジタル大辞泉によれば「開設」とは、[名](スル)新しい施設や設備などをこしらえること。また、新たにその運用を開始すること。「新駅を開設する」「口座を開設する」であり、主体が会社等の法人であっても文言上不自然とはいえなさそうです。

*6:過失致死罪など過失だけで犯罪が成立するのは例外規定がある場合に限られています。

*7:第4項は「できる」と書かれていることから、出頭しないからといって絶対に意見の聴取をしないで処分をされてしまうというわけではなく、色々な事情でされない場合もあると考えられます。

*8:参考:https://www.bengo4.com/c_1009/c_1460/n_1598/

*9:参考:https://www.fushimisogo.jp/accident/wisdom/?ID=646