ゴミログ

あの千葉大学の学生です。

論文を一度も書いたことがなかった大学生が専門外の分野の懸賞論文を受賞するまでの話

 みんなおはエコ!ゴミクルーン@DustCroon)です。

 

 懸賞論文に応募したら受賞してました。ありがとうございます。

 僕は今まで「論文」を書いたことがありませんでした。せいぜい中学生の頃に応募した税の作文コンクールくらいです。

 ということで、今まで論文を書いたことがなかった僕が、懸賞論文に応募し、受賞するまでの一部始終をご紹介します。 

 

なぜ応募しようと思ったのか

 それは去年(大学4年)の夏のことでした。端的に言うと暇だったからです。

 正確には、予備試験で惨敗したり、法科大学院入試で惨敗したり、大学の履修計画で惨敗したりと、明らかにそれどころではなかったのですが、忙しいときほど片付けとか余計なことをやりたくなっちゃう人間の性が働いて、暇だと勘違いしていました。

 そして、

 

 

 4年生だし、最後に大学生っぽいことやりたいな〜

 

 4年生で大学生っぽいことってなんだろう…

 

 卒論だ…!

 

 という安直な発想で、論文を書くことを決めました。

 卒論に追われる大学生ってなんだかカッコよくないですか?

 「徹夜で卒論書いてる」「卒論の進捗次第で出欠決めます」「卒論の進捗が悪くて…」「ゼミの先生に呼び出された…つらい…」

 使いたい…!卒論で忙しいアピールをしてみたい…!あまりにもお粗末な動機です。

    

    でも、ただ卒論を書くってアホらしくないですか?

    卒論に苦しむ全ての学生を敵に回すような発言ですが、そもそも法学部において卒論は必修どころか、開講すらされてない場合がほとんどなのです。

    それなのにわざわざ卒論を書くというなら、せっかくだしお金になりそうな卒論にしたいな〜

 

    お金になりそうな卒論ってなんだろう…

 

    懸賞論文だ…!

 

 というまたまた安直な発想で、懸賞論文を書くことを決めました。

    もちろんお金だけが目当てというわけではありません。

 より良いものを作れば、より良い評価が得られる仕組みを選ぶことは、義務ではない自分の論文作成において、大きなモチベーションにつながると考えたからです。

   そこで、見つけたのが、みずほ学術振興財団の主催する懸賞論文。

 みずほ学術振興財団とは、旧日本興行銀行(現在のみずほ銀行)の総裁を務めた故・河上弘一氏を記念して設立された財団で、今年で60回目を迎えるとのこと。

 審査委員の方々も、法律を学ぶ者なら誰でも知っているような、錚々たるメンバーです。

 そして、受賞者には学術奨励金が授与されます。その額は佳作でも7万円、3等でも15万円、2等だと30万円、1等だとなんと50万円。敷金で騒いでいたのがバカバカしく感じる額です。

   なんて素晴らしい懸賞論文なんでしょうか。一応、繰り返しになりますが、決してお金だけが目当てだったわけではありません。決して。

 

 

論文のテーマを考える

 ということで、みずほ学術振興財団の懸賞論文に応募することを決めたのですが、次に問題となるのは論文のテーマです。

 この懸賞論文には、大きなテーマが指定されており、今年は「債務不履行の帰責事由における「取引上の社会通念」」、「仮想通貨に関する法的諸問題」、「企業買収」、そして学生限定の「自由論題」から選ぶことができました。

 しかし、正直、どれも学部の勉強ではあまりやっていない分野です。

 となると、自由論題で自分の書けそうなことを書くという選択肢も出てくるわけですが、それもどうなんだ?という感じですよね。

 ちなみに昨年度だったら「インターネットにかかる民事責任」という、自身の教訓からめちゃくちゃ書けそうなテーマがありましたエコ

 

 せっかくだったら、まだ誰もチャレンジしたことがないような分野に突っ込みたくないですか?

 あわよくばそこで名を馳せて、サトウの切り餅みたいに、◯◯のゴミクルみたいに呼ばれたくないですか?

 

 そこで、仮想通貨を選びました。

 

 これからの時代は仮想通貨のゴミクルです。胡散臭い感じがするのは気のせいです。

 

 ところが、一つ問題がありました。

 

 それは、仮想通貨について、自分が全く知らないということです。仮想通貨なんて、取引をしたことすらありません。

 仮想通貨といえば、小学生の頃にハンゲームでハンコインを買ってイケメンアバターを作り、「†漆黒の龍騎士†」を名乗っていた苦い思い出が蘇ります。そうです、仮想通貨のゴミクル†漆黒の龍騎士 ゴミクル†だったのです。

 

 ということで、仮想通貨の法的問題が解説された本を探そうとしたのですが、ここでもトラブルが発生。

 千葉大学の図書館に仮想通貨を取り扱った本がほとんどない。

 Amazonで目星をつけていたものが悉く取り扱っていないのです。

 県立図書館、市立図書館に行ってもほとんどない。

 冷静に考えて、千葉での生活で「仮想通貨」なんて単語を聞いたことないし、未だにSuicaすら使えない駅もあるので仕方ないと諦めました。

 

 ということで、国立国会図書館に向かいます。

 国立国会図書館のスゴいところはなんといっても蔵書数。「国立」とか「国会」とかついているだけあって、当然日本一です。

 夏休みは法科大学院入試の合間を縫って、国立国会図書館に足繁く通う日々が続きました。これは完全に「卒論で忙しい大学生」ですね。

 食堂も比較的リーズナブルで、眺めもいいのでオススメします。

 

 

ゼミに所属してみる

 そんなこんなで、仮想通貨の全体像を掴みつつ、次の段階に移ります。ゼミに所属することです。やっぱりただ1人で論文を書くのではなく、ゼミに入ると卒論感が増しますよね。卒論つらい〜〜〜とか言いながら飲み会したいし。

 しかし、千葉大学政経学部法学コースには、1〜2年間所属して卒業論文を書くようなゼミがありません。半期単位で履修できる法学演習という科目群がその役割を担うことになります。それもあってか、卒業論文を課する法学演習がありません。

 ですが、1つだけ、過去に卒業論文の作成・指導を行っていた演習が開講されていたので、そちらの先生の元に伺いました。

 もともとその先生とはTwitter上で面識がある方だったので、話はとてもスムーズに進みました。やっててよかったTwitter

 しかし、その先生の専門は行政法です。「仮想通貨」を扱う代表的な法律としては資金決済法や、金融商品取引法等が挙げられますが、どちらかというと商法寄りで、必ずしも行政法と結びつきが強いとは言い難い分野です。

 なので、「専門的な部分は基本自力救済」「基本的な論文の書き方や作法についてはビシバシ指摘する」「行政法分野から指摘できそうな部分はツッコむ」といった前提で、参加することになりました。

 

実際に論文を書く

  法科大学院入試があったので、実際に着手したのは11月の半ばを過ぎた頃でした。

  早速、論文を書く、といきたかったのですが、最初に苦労したのは「テーマが安定しない」ことでした。

 仮想通貨について書くことは当然ながら確定しましたが、仮想通貨の何について論じるのか、それが固まらない。

 まず自分が漠然と最初に設定したテーマは「仮想通貨や仮想通貨交換業者の規制のあり方について」でした。

 ご存知の通り、僕は斜に構えた生き方をしているので、「てか、仮想通貨に関する法規制厳しすぎじゃね?もっとユルユルでいいんじゃね?」という浅はかな考えで、法制度や事件などを調べていったのですが、実は仮想通貨ってニュースで聞いているよりも詐欺など多くの問題を抱えているんですよね。むしろ、日本の法整備が追いついていない点が多いことに気付かされました。 

 そこで、逆に、現行法制度の問題点について検討する論文を書くことにしました。

 それは、仮想通貨取引で近年隆盛を極めていたICOと呼ばれる資金調達の手法です。

 詳しいことは今後公開されるかもしれない僕の論文を読んでください。人生で一度は言ってみたかったセリフです。

 こうしてテーマが具体的になり、文献を読み、考え、文を書き、文献を読み、考え、文を書き…という夢の卒論ライフが始まったのですが、色々と悩まされることもありました。

 

 

困ったことなど

・法改正の検討がリアルタイムで進行していた

 一般的に、法律は国会議員が作っているというイメージを持たれている方も多いと思いますが、これは75%ウソ*1です。

 というのも、日本の法律は内閣が提出したものが大半を占めているからです。しかも、内閣が提出するからといって安倍首相が全部作るわけでも、担当大臣が1人で作るわけでもありません。

 そのほとんどは、その法律を所管する、つまり深く関係する省庁が原案を作成するのです。*2

 そして、その原案を作成するために、各省庁では、審議会や研究会などを開催し、大学教員から実務経験者まで、幅広い人を集めて意見を募ることが多いようです。

 今回の仮想通貨の場合には、資金決済法を所管する金融庁のもとで、仮想通貨交換業等に関する研究会2018年4月10日から同年12月14日まで計11回開催されました。

 

 ん?

 

 そうです、2018年4月10日から同年12月14日です。

 僕が論文を書き始めたのは2018年11月の終わりです。つまり、研究会の様子をリアルタイムで追いかけながら、論文を書き進める必要がありました。*3

 僕が懸賞論文を提出する前に、論文で指摘する問題点が研究会でも指摘されてしまってはとても困るので、血眼で議事録と報道を追いかけていました。

 

・分野が最先端過ぎる

 そもそも、仮想通貨の代表格とも言うべきビットコインですら、登場したのは10年前です。ICOに至っては2014年前後から話題になりだしたといった具合なので、参考できる文献がかなり少なかったです。

 そして、論者によって知識レベルも様々で、その辺の整合性を取るのも難しかったです。

 本当は、こういった場合には、諸外国の現在の法制度等についても比較検討し深く言及できればよかったと思うのですが、外国語で留年しそうだった僕の語学力では当然ダメでした。

 

・普通に時間が足りない

 懸賞論文は1月中旬が締め切りでしたが、提出はA4で15枚以内だったので、1日1頁で2週間で終わるじゃん!とか思っていました。

 しかし、現実は1日140字も進みませんでした。僕には1日1ツイート分の文章が限界のようです。

 おかげさまで「徹夜で卒論書いてる」「卒論の進捗次第で出欠決めます」「卒論の進捗が悪くて…」「ゼミの先生に呼び出された…つらい…」は無事に全部言うことができました。最悪です。

 卒論つらい〜〜〜とか言いながら飲み会もやってみましたが、全く酔えません。常に脳裏にI・C・Oの3文字があるのです。

 15枚ですらこれなので、これ以上の分量が課されている卒業論文を書いている人は本当にスゴいと思いました。

 

 

・バックアップを取り忘れた

 提出3日前に3頁分くらいデータが飛びました。マジで。泣きました。

 

 

受賞しました

 こんな感じでいろいろありましたが、なんやかんやで締め切りギリギリで提出し、いつの間にか千葉大学も卒業しました。そして、すっかり忘れた頃に受賞の連絡が来たので本当にビックリしました。しかも3等です。15万円です。

 なんだ3等かと思われるかもしれませんが、昨年度は学生の部からは佳作しか出ていなかったので、まあまあ良かったのかもしれません。

 今までに論文を書いてそれを評価してもらうという経験がなかったので、自己評価としてはよくわかりません。悔やまれるのは、解決策として提案できたかもしれない諸外国の法制度等により深く言及できなかったことです。この時ばかりはもう少し外国語を勉強しておくべきだったと後悔しました。

 とはいえ、自分が4年間の大学生活で学んだものが1つの形になったこと、そしてそれが日本でトップクラスの専門家の方々に読んでもらえ、一定の評価をいただいたことはお金以上の価値があると感じました。30万くらい欲しかったとか決して思っていません。

 また、担当の先生やゼミ生を始めとして、応援してくれた方にこの場をお借りして心から御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。受賞したら焼肉奢るって言った話は忘れてね。

 

 ということで、学生生活でなにか物足りなさを感じている方は是非、懸賞論文にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。 

 

 最後に、学部生が論文を書くときに参考になりそうな本を紹介しておきます。

 それは、「カフェパウゼで法学を―対話で見つける〈学び方〉 」です。 

              

 実は僕が所属していたのが、この本の著者である横田明美先生(@kfpause)のゼミだったというオチもあるのですが、当然のことながら、今回宣伝を依頼されたとか、これが記事広告とかでもありません。(念の為)

 この本では卒論だけでなく、法学部生としての過ごし方全般についてのライフハックが書かれています。

    法学書にありがちな堅苦しい雰囲気や口調を全て取り払いつつ、学生目線と教員目線、両方の視点に立っているので、とても読みやすかったです。    

 出版社の弘文堂のページで、目次や冒頭部分を立ち読みすることができるので是非見てみてください。

 

 そしてもう一冊、先月出版されたばかりの「法学演習Q&A」もオススメです。

 

               

 以前にもブログ記事にしたのですが、この本を作るにあたって開催された特別ゼミに僕も参加しました。

 カフェパウゼ本ほど卒論には特化していないですが、法律学習全般でありがちな疑問点や悩みなどを、バラエティ豊かな3名の先生たちがストレートに答えています。

 こちらも有斐閣のページで目次や冒頭部分を立ち読みできるようなのでどうぞ。

 

 

 

しかもこの本、なんといっても…

 

 

そう、なんと…

 

 

 

 

巻末にゴミクルーンって書いてあります。

 

 

以上

 

 

*1:第196回通常国会における議員立法の件数割合より https://www.clb.go.jp/contents/all.html

*2:この辺の流れについては以下参照 https://www.clb.go.jp/law/process.html

*3:なお、現在は議事録等が揃っているが、書いている当時はまだ第8回くらいで更新が止まっていた。